メニューを開く 項目を開く 記事投稿時刻 コメント トラックバック カテゴリー ブログテーマ タグ URLリンク コメントの編集 コメントに返信する

コロナ・ウイルス

2020/02/17  19:38
0
ウイルス防御にマスクがほぼ無意味なのは前回述べた。

今回は消毒の話

「消毒」というが、一般の消毒薬に毒を消す働きはない。
実際は、殺菌の意味で消毒という言葉を使っている。
ただ「殺菌」だと菌だけを殺しそうで、菌ではないウイルスに効果なさそうに聞こえるからややこしい。
今回は、ウイルスを破壊する、という意味で消毒という言葉を用いる。
消毒というと、まずエタノールを思い浮かべる。
エタノールにはウイルスの外殻(エンベロープ)を破壊する働きがあり、ウイルス対策として有効であるが、その能力はさほど高いものではないため、70%以上の濃度を必要とする。
最近、新型肺炎さわぎでエタノールが入手しにくくなっているので、他の消毒薬について考察してみよう。
最近、消毒薬として次亜塩素酸水というのが売られてるらしい。
見たことはないが、化学的性質はわかるので解説する。
ほんとうに次亜塩素酸のみが水に溶けた状態のものを生産し、販売しているのか、はなはだ疑問である。なぜなら、生産に手間がかかるわりに意味がないからだ。
次亜塩素酸は非常に不安定な物質で、酸素を放出して塩化水素(塩酸)になりやすい。そして、次亜塩素酸の半数が塩酸になった状態、つまり次亜塩素酸と塩酸が半々でまざった状態の水溶液を「塩素水」という。塩素を水に溶かしたものとおなじだ。
出荷時に苦労して「次亜塩素酸水」を作って高値で売ったにしても、販売時には安価な塩素水になっている可能性が高い。消費者センターにはぜひ、分析してほしいものである。
塩素水を作るのは簡単だ。「混ぜるな危険」と書いてある2種類の洗剤を混ぜれば発生する塩素を水に溶かせばよい。
ただし、「混ぜるな危険」は伊達ではない。発生した塩素ガスは第一次世界大戦でドイツが毒ガスとして用いた物質だ。ドラフターのような、毒ガスが発生しても危険を回避できる環境で作る必要がある。
毒ガスとしての毒性はあまり強いほうではなく、アニメ「金田一少年の事件簿」であったような方法で殺人をするのは、実はむずかしい。塩素ガスはとにかく臭いのだ。一箇所にとどまって、死ぬまで塩素ガスを吸い続けるのは困難だ。ふつう、「混ぜるな危険」を混ぜて発生したあの匂いをかいだら、その場から逃げ出すだろう。ただし、高濃度の塩素を一気に吸ったら話は別だ。びらん性毒ガスである塩素が肺にはいると、肺を侵す。肺の中がただれて、酸素の交換ができなくなり、死に到る。びらん毒の恐ろしいところは、解毒があまり意味がないということだ。つまり、吸引した塩素を中和することはできる。たとえば低濃度のアンモニアをかがせれば、塩素は無害化できるが、ただれた肺胞はもとに戻らない。体内で必要な酸素交換をできないほどのダメージを受けていれば、酸欠で死ぬことになる。おそらく数分で死に到ることになるので、人工心肺手術は間に合わないだろう。
マスタードガス(イペリット)なども同様な作用をする。ちなみに、有名な「サリン」はびらん毒ではなく神経毒でこれらとは作用が異なるが、今回は割愛する。
次亜塩素酸水の濃度は50ppmとか200ppmらしい。エタノールに比べると極めて低濃度であるが、次亜塩素酸の酸化力は極めて高く、この程度の濃度でも十分にウイルスを破壊できるのだろう。次亜塩素酸は、塩素系漂白剤の主成分であるから、これ以上濃度が高いと衣服が色落ちしてしまうのだろう。
「消毒」という観点のみに着目するなら、次亜塩素酸水を用いるより塩素系漂白剤(具体的には次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カルシウム、ハイターやカルキと言ったほうがわかりやすいだろうか)を用いたほうが安上がりだ。ただし塩素系漂白剤には大きな問題が2つある。
一つ目は、手を洗わない限り、てについたまま残るということだ。次亜塩素酸水は、結局塩素ガスなので、水分が飛ぶと一緒に空中に消えてしまう。漂白剤は固体なので、蒸発せずに手に残る。
二つ目は強アルカリだということだ。弱酸である次亜塩素酸と強アルカリである水酸化ナトリウムの塩である次亜塩素酸ナトリウムは強アルカリであり、たんぱく質を溶かす。ハイターやカルキが手についてヌルヌルした経験はないだろうか?あのヌルヌルは強アルカリで皮膚の表面が溶けることによって起きる。それほど急速に溶けるわけではないから、指が溶け落ちたり、骨が見えたりすることはないが、ぬるぬるしたときは、早めに洗い流したほうがいい。ちなみに、目に入ると失明の危険があるので、まず大量の水で目を洗って、病院に行ったほうがいい。(化学的な話をするなら、うすいホウ酸水で中和したほうがいいので、ホウ酸系目薬があるなら水であらったあとにホウ酸目薬をさしてから病院行ったほうがいい。目はデリケートなので、ホウ酸団子用に買ったホウ酸で目薬をじさくするのは、やめたほうがいい。手についたヌルヌルを洗い流すのにホウ酸水を作るのなら有効である。この場合はホウ酸水でなく、酢でもいい。匂いが気にならないのならだが。)
さて、次亜塩素酸水の欠点は、カルキ臭いということだ。
そこで次の物質を紹介しよう。
薬箱の中に、消毒薬がはいってないだろうか?傷口に用いる消毒薬は、比較的安全性が高いといえる。
このうち、マーキュロクロム(赤チン)は今回の用途には向かない。これで消毒したら、手が真っ赤になってしまう。
英語で「Red handed」と言えば犯罪者のことだ。「悪いやつほど手が白い」なんて映画もあったが・・・。
ヨードチンキは、実は次亜塩素酸水と似たようなものだ。ヨードチンキの有効成分ヨウ素と塩素はどちらもハロゲンで性質が似ている。違いと言えば、塩素は気体でヨウ素は昇華しやすい固体であるということだ。ヨードチンキで手を消毒するのはアリである。
オキシドール(オキシフル)は3%過酸化水素水である。中学校で酸素を発生させる実験で使った記憶があるだろう。オキシドールを二酸化マンガンにかけるとシュワワワーっと酸素の泡が発生する。手近な二酸化マンガンは、マンガン乾電池を壊せば、中に黒っぽい粉として入っているが、シュワワワーを見たいのなら傷口に塗ってみるのが手っ取り早い。血液中のカタラーゼという酵素が過酸化水素を水と酸素に分解する働きを持つ。オキシドールのメリットは臭くないということだ。それと、乾いたら消えてなくなるということだ。欠点は、分解しやすいということだ。薬箱に何年も眠らせていると、いつのまにかただの水になっているので要注意だ。傷口につけて、シュワワワーとならなかったら、買い換えたほうがいい。オキシドールによる手の消毒もアリだ。
薬箱にありそうなその他の消毒薬は、成分がわからないと解説しようがないので割愛する。

もうひとつ消毒薬を紹介しておこう。
クレゾールだ。クレゾールはエタノールと同じようにヒドロキシル基を持つ有機物だが、性質は若干異なる。クレゾールは病院で医療器具の消毒などによく用いられており、独特の匂いがする。だから、クレゾールの匂いをかぐと「病院の匂いがする」と感じる人も多いのではないだろうか。クレゾールはエタノールより消毒効果が高く、3%ほどの濃度で消毒効果をはっきするが、高濃度のクレゾールが手につくと皮膚がただれるので注意が必要である。原液が皮膚についたら、即座に大量の水で洗う必要がある。
消毒に使うには、洗面器一杯にキャップ1杯ぐらいをめどに薄めればいいだろう。次亜塩素酸水と違って、カルキ臭くはないが、病院の匂いがするのと、原液に触るとただれるというのが欠点だ。あの匂いが気にならないのなら、手の消毒用にアリだ。
さて、このクレゾールにはもう一つの使い道がある。「逆性石鹸液」とも呼ばれるクレゾール水は、その名の如く石鹸と逆の性質を持っている。このことを活用した使い道がある。
たとえば梅雨時、部屋に干した洗濯物の匂いが気になったことがないだろうか?クレゾールであの匂いをとることができる。
具体的には、洗剤で普通に洗い、普通にすすぐ。そのあと、クレゾールをキャップ1杯入れ、もう一度洗い、すすぐ。
そのあと脱水すればできあがり。干しても洗濯物の匂いがしなくなる。クレゾールをいれすぎると、今度は洗濯物から病院の匂いがするようになるので、入れる量は自分で加減してほしい。

以上のように、エタノールの代わりに使える消毒薬もあるので、売り切れだからと言って、ネットで高い転売品に手をだす前に上記の消毒薬を検討してみて欲しい。

おまけ
メタノールについて質問を受けたので、ついでにメタノールの話もしておこう。
メタノールとエタノール、名前は似ているが、性質も似ている。同じ1価の低級アルコールで、メタノールは別名メチルアルコール、エタノールはエチルアルコールだ。飲食用・消毒用アルコールはエタノールで、メタノールは燃料用・工業用アルコールとして売られている。メタノール自身の毒性はエタノールとあまり変わりがないし皮膚についた場合、エタノールと同様の消毒効果が期待できる。だが、メタノールは消毒薬として人体に用いることはまずない。それは、肝臓による解毒のメカニズムに起因する。
有毒な物質が体内に入った場合、肝臓はその物質を酸化し、無毒化しようとする。
エタノール自身は毒性が低く、のむと酔った状態になる。しかし、毒物であるから肝臓は酸化しようとする。
つまり、酸化することに意義があるわけだ。
ところが、エタノールを酸化するとアセトアルデヒドになってしまう。
エタノールをはじめとするアルコール類が弱毒なのに対し、アルデヒド類は一般にかなり毒性が強い。2日酔いの頭ガンガンは、肝臓のしわざである。ここで
酸化することに異議がある!
というのは早計である。
肝臓はアセトアルデヒドをさらにせっせと酸化し、最終的に無害な、というより有益な酢酸に変えてしまうのだ。そのため、エタノールを摂取すると一時的に体調が悪化するが、最終的に回復するわけだ。
メタノールの毒性もエタノールとにているなら、飲むと酔った状態になるはずだ。(危険なので試したことはない。)
肝臓はメタノールに対し、エタノールのときと同じように酸化しようとし、同じようにアルデヒドができる。
メタノールが酸化してできるホルムアルデヒドはアセトアルデヒドと比べても毒性が高い。ホルムアルデヒドはホルマリンとして知られ、標本の保存液としてよく用いられる。また、シックハウス症候群の原因物質でもある。メタノールが危険なのはホルムアルデヒドが生成されるからだけではない。肝臓がさらにホルムアルデヒドの酸化に成功したとしても、生成されるのは、やはり毒性の高い蟻酸だからだ。つまり、メタノールを摂取すると、エタノールのときのように無害化ができず、ホルムアルデヒドと蟻酸が体内に蓄積して死に到ることになる。そのため、メタノールによる傷口の消毒などもってのほかである。
しかしながら、体内に入らなければ、メタノールの毒性は低い。アルコールランプのメタノールが手についても、放っておいて乾燥させれば危険はない。そういう意味では、エタノールの変わりにメタノールによる消毒は理論上は問題なくおこなえるが、誤飲すると命にかかわるので、手の消毒には用いないほうがいい。


スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿